2012年04月23日 16:25
牛丼店「東京チカラめし」
都内に住んでいると、最近スゴイ勢いで増えているのがわかります。第1号店ができたのが2011年6月ということなので、まだ1年も経ってないんですよ。なのにこの繁殖ぶりは一体何ですか。
今でもこんな短期間で急成長するケースがあるんですよ、日本の中でも。しかも吉野家、松屋、すき家という激しい争いの中に、身を投げだして戦いを挑んだ結果です。30年前より安い値段で売らざるをえないような過酷な業界なんですよ。不景気とか、人口が減りマーケットが縮むとか、そんな言い訳しているようじゃダメだと自戒の念を込めて思います。
牛丼といっても“焼き牛丼”というわかりやすい特色をつけるとともに、「東京チカラめし」というパワフルネーミング。「吉野家」「松屋」「すき家」という名前と横並びにせず、個性を追求したのもよかったんでしょうね。結果こそ全て。なにしろ短期間でこれだけ成功したからには“よかった”と言うしかない感じです。ラーメン二郎とか、すた丼とか、メガバーガーとか、いわゆるガッツリ系フードのブームにも乗っています。名前もガッツリ、看板のデザインもガッツリ、もちろんお味もガッツリ。で、お店の利益もガッツリ。
でもこんな男臭いネーミングと看板じゃ、女性客は入らないでしょ。・・・と思って店内を除くと、意外にもけっこう若い女性もいるんですね。僕が若い頃、吉野家で女性客を見かけたことなんてほとんどなかったのに。今の女の子たちはちょっと違うんだなぁ。たくましいなぁ。
このお店を出している会社は、三光マーケティングフーズといって、基本的に居酒屋などの会社でした。お店を見ると「月の雫」とか「東方見聞録」とか「黄金の蔵」とかどちらかという上品で落ち着いた店名ばかり(ま、腰を落ち着けて食事やお酒を味わう場所だから当然ですが)。こういった牛丼のような店舗を出すのは初めてとはいえ、思い切ったというか、振り切ったネーミングをしたもんだなぁと思います。
「東京チカラめし」は、すでに商標登録もされています。で、調べてみたら面白いことがわかりました。実はこの会社、「大阪チカラめし」と「九州チカラめし」というのも商標登録しているんです。おお、そう来たか!
東京チカラめしは、今はたしかに首都圏だけの展開なので、近いうち関西では「大阪チカラめし」を展開したりするのかも。あるいはよその会社がマネして「大阪チカラめし」のような店を出すのを防ぐためかな。「東京チカラめし」の出願日が2011年3月7日になっているのに対して、「大阪チカラめし」と「九州チカラめし」の出願日は同年7月11日(つまり1号店出店後)と微妙に時差があるのも、何か理由を想像したくなります。ちなみに「東京」とか「大阪」と付けてもその下に来るのが一般名詞ではないので、地域商標制度の規定には引っかかりません。「東京牛丼」だったら引っかかってしまうでしょうね。
さて、今、日本の牛丼業界ではすき家と松屋に押されぎみの吉野家は、海外ではかなり伸びているようです。確か既に500店舗を突破し、アメリカだけでも100店舗を超えているとか。個人的な感想としては、アメリカ人には吉野家の牛丼よりも、東京チカラめしの焼き牛丼のほうが合いそうな気がするし(1回しか食べたことないけど)、近いうちマンハッタンやハリウッドでもその看板が見られるかもしれませんね。「Tokyo Chikara Meshi」として。
その際、「Tokyo」という固有名詞が入っているのは、たしかに目じるしとしてはいいでしょう。まさか最初からそこまで想定してネーミングしたんじゃないとは思いますが。
●東京チカラめし ホーム
2012年04月11日 16:54
トマト「妻せつ子」
こういうネーミングって、巷でも話題になっていろんな意見も出てくるんですね(「男前豆腐」なんかもそう)。だから僕があえてコメントすることはあまりないんですが、今回はちょっと取り上げてみます。たしか10年くらい前からある商品ですが、地域によってはまだ知らない人もけっこういるようなので。東京に住んでいると、たま~に見かける程度かな。市場に卸していて、大手スーパーとは直接取引していないようです。
商品に人の名前を付ける場合はけっこうあります。でも食べ物で、しかも生で食べるもので、しかも鮮やかな色で果汁性のあるトマト・・・というところがなんともハマるんですね。これが白菜やキューリだったら、見た瞬間、こんな150kmの豪速球で生理に直撃しないでしょう。やっぱり熟す食べ物だからです。そう、熟しているというのが、ツボ。
平仮名というのもいいですね。でもたとえば「妻さやか」とか「妻あすか」じゃイマイチだよなぁ。「せつ子」という、ちょっと古典的というか、湿っぽい畳の部屋がまだ残っているような昭和の匂いがする名前だからシズルんです。世のおじさんをくすぐるんです。中年の男たちはクラリオンガールだった烏丸せつこ(色っぽかった!)を思い出し、もっと昔のおじさんたちは往年の女優、原節子(さすがに僕も知らない!)を思い出す。だいたい今どき、「せつ子」なんて名前を付けられる女の子はほとんどいないと思いますよ。「心愛」と書いて「ココア」とか、「明日」と書いて「ともろう」とか読ませる名前を付けるような時代に。
ただこの名前、実は特に選んでつけたのではないようです。単純に生産会社の社長の奥さんの名前からとったものです。もともとは特に商品名もつけず売っていましたが、なかなか数字が上がらない。で、困った社長自身が、奥さんの名前を付けることを思いついたとか。そのとき、ただの「せつ子」ではなく「妻せつ子」と、「妻」の文字を入れたのがエラかったですね。これが禁断の味のような魅力を与えてしまったというか・・・・。仮に何か文字を入れるにしても「母せつ子」じゃ、大地感や健康感は出ても、野菜の名前としてはけっこう普通になってしまうもんね。おかげで売上も以前に比べて飛躍的に伸びたようです。「妻」よ、あなたは経済効果が高く偉大だ。
この生産会社は、熊本の八代トマト流通センターといいます。当然のごとく地元にはJA(八代JA)があり、当然のごとくトマトを扱っています。こちらの名前は「はちべえ」。どちらも減農薬トマト、どちらも同じ人の名前からとったネーミングですが、「せつ子」が強烈すぎて霞んでしまいまいすね。ちなみに「はちべえ」は八代平野の「八」と「平」からとったようです。せっかく同じ地元の男と女だし、二人・・・じゃなく二つの品種を掛け合わせて、新しくできたトマトにまた誰か人の名前を付けたらどうでしょうか。
あるいは他の地域の産地トマトも、いっそみんな女性の名前にするとかなったら面白いですね。お店で見比べて、きょうは「せつ子」にしようか「さおり」にしようか、なんてね。「陽子」はまだまだ青いな、「聖子」はハリがないな、とか。
●八代トマト流通センター 妻せつ子
2012年03月05日 15:44
企業「富士フイルム」など
川の流れは絶えずしてしかも元の水にあらず・・・なのは企業も同じで、時代とともに事業内容がどんどん変わっていくことはよくあること。気がついたら、見かけによらないというか、名前によらない会社になってしまっていたなんてことも結構ありますね。「シャープ」は元々シャープペンシルの会社だったからこそ付けられた社名だし、「DHC」は大学翻訳センターの略。あと「ビックカメラ」とか「ヨドバシカメラ」なんてのも違和感をもちませんか。カメラなんか商品のほんの一部に過ぎないじゃん、て。
その点でいうと、個人的に最近気になる企業のひとつに「富士フイルム」があります。ずっとこの名前でやっていくんだろうか、という疑問が数年前から沸き、最近、ますます思いが強くなってきたからです。だってさぁ、医療品会社なんかをガンガン買収するわ、化粧品事業は本格的だわで、どう見ても「フイルム」という名前でくくれなくなったと思うんですよ。
たしか5~6年前に、「富士写真フイルム」から「富士フイルム」に社名変更した(同時に持ち株会社にして、その下に事業会社としての「富士フイルム」をぶら下げた)のは、写真フィルムの時代が終わりつつも、それ以外にさまざまなフィルム技術をベースにした事業を行っていた会社としては当然でした(細かいことですが、今も昔も社名は「フィルム」ではなく「フイルム」)。そして富山化学を買収したときは、「富士」と「富山」を合わせて「富士山」という社名にでもするんかいな、などと冗談で思っていました。今から思うとそれはまだ序の口で、後に加速度をつけての他事業に進出。ここ2~3年だけでも、どれだけの予算をM&Aに使い、どれだけ事業の幅を広げたか。
とはいっても、大手鉄鋼メーカーがうなぎの養殖をやるのとは違って、根っこの技術どうしはつながっていて、事業領域の拡大には合理的な理由もちゃんとあるようです。松田聖子や小泉今日子が宣伝している化粧品の「アスタリフト」は、フィルムの主原料であるコラーゲンを化粧品技術に応用したものらしいし。
その事業戦略があったからこそ、この前、チャプター11を申請し破綻したコダックのようにならず、ほんと---っに見事な変貌と成長を遂げたんですね。僕が言うのもおこがましいですが、この会社の経営者は凄いと思います。古森さん、そういえばNHK経営委員会の委員長もやってましたね。それに比べてコダックのどうしようもなさと言ったら、もう・・・。破綻直前時に富士フイルムを特許侵害で提訴したのは、往生際まで悪すぎるとしか思えません。KO負け寸前のボクサーがわざとクリンチしちゃダメでしょう。自己破産を申請する直前に、わざとサラ金で最後のカネを借りるのと同じタチの悪さを感じます。
さて気になる社名の今後の展開としては、①そのまま気にせず使う。②持ち株会社の名前を“総合的なもの”に変える(でもただの「富士」にはできないだろうけど)。③事業会社のほうのネーミングを変える。④事業ごとに分社化して、フィルム事業会社だけに今の名前を使い、その他の事業会社はその事業内容に合う名前をつける。・・・などというのが考えられますね。でも、けっこう今のままかもね。
その他の企業で最近、気になるところでは「昭和シェル石油」なんかもあります。今や太陽光発電でかなりの実績を上げつつあり、そろそろ「石油」の文字を外したほうがピッタリくるのでは?とお節介したくなります。「日立造船」なんかもそう。一体、いつまで「造船」と名乗っているつもりなんですか。たしか造船部門はとっくの前に切り離されて、プランド事業や環境事業が主流の会社ですよね。まだまだほかにも、似たような状況になっている企業はいっぱいあると思います。
2012年02月25日 11:30
下着「ズルイブラ」「ズルイパンツ」
「ズルイブラ」というネーミングを聞いて最初に想像したのは、いわゆる矯正下着。自分の胸を実際以上に“ごリッパ”に見せられるものだろうなと思いました。で、それを目当てに寄ってきた男が時間とお金をかけてようやく二人きりになり、万感を込めて素のままの胸を見たとたん、ガッカリして「ズルイ!」と叫びたくなる、そんな解釈を勝手にしていました。えーと、別に僕の体験談じゃありませんよ。もっともバブルの頃のボディコンブームのときは、そんな経験をした男性が僕の周りにもいっぱいいたようですがね。しかも月夜の晩に声をかけた美しい人魚が、太陽に照らされたすっぴん姿を見たらただのジュゴンだった、なんてオチも付いたりして。
ネーミングの話に戻すと、同時に、こういったネガティブなコトバをネーミングに使う時代になってきたんだなぁとも感じました。「ヤバイ」というコトバが、すっかりいい意味で使われるようになったこともあり、それはそれでアリだよな、なんてね。言葉の意味や使い方なんて生活が変わるように、どんどん変わっていくもの。文科省推薦の人間でも日本語原理主義者でもない僕としては、そう思います。そういえば僕が小学生の頃は、「全然」という言葉が来たら“否定文にすること”というような国語の問題がよく出ていたけど、今でもあるんでしょうか。だって今や「全然いいね」とか「全然おいしい」なんて言い方、普通でしょ。
・・・なんて、勝手にいろいろと考えていたんですが、少なくと前者の意味の解釈は僕の勘違いだったようです。ま、冷静に考えれば当然です。自分から「騙してます(特に男性を)」とか「誤魔化してます」なんて宣言するようなネーミングになどするわけがありません。しかもまとも企業がね。怪しげな通販会社がシークレットブーツを売るのとはワケが違います。
実際の商品特長は、胸元にアンダーホックが付いていて、それを外してラクになれるというブラのようです。なんだ、そんな程度のことなんですね。ブラって付けているときそんなに苦しいんでしょうか。じゃ、ズルイパンツというのは、食べ過ぎても苦しくないようなゴムでできたパンツか、と思ったら、こちらは歩いてカロリー消費をアップするパンツだそう。ブラの機能とはまったく関係性がないですね。これをまとめて「ズルイ」というコトバでくるんだだけなのか。ちょっと無理やりというか、強引な気もします。
ここでいう「ズルイ」とは、内緒でベンリとか、内緒で効果的といった意味ですね。ただこんな程度で「ズルイ」なんて言ったら、今の商品は以前に比べたらあれもこれもズルイものだらけでしょ。下着だけじゃなく化粧品や洋服や小物など女性が身につけているモノだけ見てもかなりがそう。新しい商品が発売されるたびに、つんくに「ズルい女」を熱唱してもらわなければいけないくらいです。
●ワコール・ウイング「ズルイブラ」「ズルイパンツ」
2011年12月02日 01:19
ソーシャルゲーム「グリー」
今や飛ぶ鳥をまとめて落とし、CMでテレビ局のフトコロをうるおし、デイトレーダーをくぎ付けにするグリー。東北大震災もユーロ債務危機もこの国のアホな経済政策も、みーんな無関係にして株価の勢いは止まりません。
同じゲーム関連でも最近の任天堂の株価とは正反対ですね。市場はなんて正直なんでしょう。もう専用ゲーム機でゲームをする時代じゃないという判断。数年前、あれだけ勢いがあり、このコラムでも取り上げたことのある任天堂がこんなふうになるなんて、島田紳助の引退と同じくらい予想もできませんでした。
グリーは、いつか読んだ日経の記事によると、売上高利益率が何と91%という信じられない数字です。原価になるのは家賃とサーバー代だけ。そりゃあんなにCMも打てるはずですわ。昨日食べた700円のラーメンの原価が、6円ちょっとだったらどうですか。現実には刻みネギにもなりませんぜ。真っ当な商品を作るメーカーの人間から見れば、打出の小槌を手に入れた会社のように見えるでしょう。まぁ、ITやデジタルサービスはこういう成功があるから面白いともいえるんですけどね。
でもこれだけ儲かっていると、英語圏の国だとしたら、そのネーミングにひっかけて“GREED”(強欲という意味)と揶揄されて呼ばれるんじゃないでしょうか。無料で会員を集めながら参加者の弱みにつけこんでアイテム課金をしていくというやり方、そして対象の大半が子供や青少年であることなどから、よけいにそう思ってしまいます。ウォール街のバンカーやヘッジファンド連中がそう非難されていたように。
映画「ウォール街」でマイケル・ダグラスは“Greed is good! Greed is right! ”と叫び、結局はインサイダー取引で逮捕されてしまいました。その続編で今年、日本公開となった「ウォール・ストリート」では、長い投獄から出たダグラスが、不動産バブルに沸くアメリカ(つまりリーマンショック前のアメリカ)で目一杯のレバレッジをかけ数々のデリバティブを駆使して公然と大金を儲ける連中を見て、“I once said Greed is good. Now it seems it’s legal” (かつて私は「強欲は善だ」と言ったが、今や「強欲は合法」になった)と皮肉りました。俺は逮捕されたのに今の奴らは何だ、というワケです。
さて、同業でありモバゲーを運営するDeNAがプロ野球チームを買収したし、この業界の勢いは止まる気配はない・・・と思うのが一般的でしょうが、実は個人的には先行きどうかと思う部分もあるんですね。それはまさに“legal”の問題。つまり未成年の子供たちや若者が知らず知らずにどんどんお金を使ってしまうことが社会問題になり、法的規制が入ってしまわないかということです。何年か前のサラ金の過剰債務問題、昔のダイヤルQ2問題のように。もし規制が入ったら、一気にしぼんでしまう可能性だってあるわけです。まぁ、貧乏人のやっかみで終わればいいんですけど。
最後になってしまいましたが「GREE」のネーミングは、6次の隔たりを意味する「Six Degrees of Separation」という統計学・社会学の仮説から名付けられたとのこと。「人は自分の知り合いを6人以上たどっていくと、世界中の人とつながりを持っている」という説です。その“Degrees”から“gree”の部分だけを抜き出したらしいです。
一般的にネーミング作業は、意味を凝縮させていくことが多いけど、これはほんのちょっとだけツマんだ感じで全体の意味はまったくわからないし、正直、あまり説得力も感じませんね。口当たりのいいところだけテキトーに見つけた・・・失礼ながらそんな感じがしてしまいます。
【後記】
年明け早々に、僕が予測で書いた規制の話が、本当に大々的に問題になってちょっと驚いています。
●GREE 始まりと由来