ネーミング次郎のネーミングコラム

2012年12月17日 10:46

旅行ガイド本「地球の歩き方」

海外旅行といえばコレ、というほどの定番本です。創刊は1979年で、もともとはたしかバックパッカーや格安の個人旅行者を対象にしたものでした。“1日10ドル以内で旅行するためのガイドブック”なんていう紹介文も、昔は入っていました。まぁ、今の若い人は知らないでしょうね。定年退職後、さんざん海外旅行をしている僕の父母も知らないでしょうけど。

それが時代とともにターゲットを広げて、家族旅行やパッケージツアー者も普通に利用する本になってしまいました。当然、高級ホテルや高級レストランもわんさか紹介されてます。そりゃ日本の経済成長にともなって海外旅行者がグングン増えていった時代では、そうしたほうが本の売れ行きも増えるでしょ。白馬に乗った王子様を夢見てた女性がベンツに乗った地上げ屋様に貞操を奪われていくバブル期に、“1日10ドル以内で~”なんていってもねぇ・・・円高を差し引いても時代錯誤も甚だしいもんね。昔ながらの愛用者にとっては残念だとは思うけど、それが世の中ってもんなのさ。

雑誌でありカテゴリーも全く違うけど、同じ1970年代に創刊した情報誌の「ぴあ」が廃刊(雑誌としては)に追い込まれたことを考えると、“うまく乗り換えたなぁ”という感想をもちます。あ、別に悪い意味じゃないですよ。経営者としては、しごく真っ当な判断だと思います。

というわけで、本の内容は創刊当初とすっかり変わってしまったけれども、「地球の歩き方」というネーミングには、当初のターゲットがちゃんと反映されていますね。

まず「歩き方」というのが、とてもバックパッカーに似つかわしいです。あくまで自分の足で発見するというニュアンスがありありです。決して「楽しみ方」じゃないんですね。「世界の」ではなく「地球の」というのも、どことなくバックパッカー的です。その2つの言葉が重なったことで、自由で、孤独で、未知の場所に対する探求感、ちょいとロマンチックな響きを出しています。しかも創刊当時の地球の情報地図は、今の何十倍も大きくて、希薄だったはず。まさに“これしかない!”というネーミングだったように思われます。

世界でいちばん売れている旅行ガイドブックには「Lonely Planet」というのがありますが、こちにらも「World」ではなく「Planet」になっていますね。そのぶん旅のシズルというか、旅欲をそそります。しかも「Lonely」だなんて。なんでもジョー・コッカーの歌を元ネタにしたネーミングらしいです。

さて「地球の歩き方」を出版しているのはダイヤモンド・ビッグ社。経済誌などを出しているダイヤモンド社の系列です。決して旅行会社系でも、地図会社系でもないんですね。旅行会社系ではJTBから出ている「るるぶ」とか、地図会社系では昭文社の「まっぷるマガジン」とかありますが、「地球の歩き方」は日本ではダントツの人気でしょう。旅行とか地図といったバックボーンをもたない会社がこれだけの本を作り上げたことは、大したものだと思いますよ。初期の頃は、まさに「歩き方」を地で行くような地道で大変な作業だったと察します。だからこそ、こんなにも多くのファンを獲得できたんでしょう。

ただ今のバックパッカーや個人旅行者はどうなんですかね。たぶんiPadを片手に、行く場所や宿泊先を探しているはずです。情報量と更新スピードが本なんかとは比べ物にならないし、Wifiがどこでも使えるからです。先日、僕もバンコクに行きましたが、成田で購入した「地球の歩き方」にはBTS(バンコク市内の電車)の路線情報に最新駅まで載っていず、唖然としましたね。残念ながらカオサン(世界のバックパッカーが大集合する街)には行かなかったので、実際に見たわけではないですけど。

あと「歩き方」というのは、今の世評をとらえると、他にも使えそうですね。30歳を過ぎてもニート生活をしているような青年向けに、「大人の歩き方」とか「社会の歩き方」なんていう本でも出したらどうでしょうか。

●地球の歩き方ガイドブック編集部

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