ショップ「王様のアイデア」
以前働いていた会社で、同僚が「また“王様のアイデア”が出ちゃったよ」と頭を抱えていることがあった。自分がやっている仕事に対し、突然、何も事情を知らない社長や役員が、わけのわからないことを言い出し、模範的サラリーマンとしてそれを遂行しなければならなくなったときだ。訳すと「エライ人のB級アイデア」。悪意を込めて訳すと「アホな上司がバカ丸出しのアイデア出しやがって!」となる。あんたは“裸の王様”なんだから、というわけだ。
このセリフは、もちろん同名のユニークなお店「王様のアイデア」からの引用である。その「王様のアイデア」が今年5月ですべて閉店してしまったと聞いた。寂しい半面、そりゃそうだろうなとの納得感もある。ときの流れを感じることが、ここにまたひとつ。昭和は遠くなり、いつも笑わせてくれることに一生懸命だった小学校時代のクラスメイトも、いろいろと考えなければいけない大人になっていくのだ。
さて元同僚の上司とは違い、ショップのほうの「王様のアイデア」は、とてもユニークで好意をもたずにはいられないお店だった。“ごろ寝したままテレビが見られるメガネ”とか“水飲み鳥”とか、今から思えばかなりアナログB級の発明ものばかりだったけど、あの時代特有の茶目っ気があって楽しかった。あまりにも楽しい商品がいっぱいあるので、お店で何も買わず長い時間をつぶしてしまったという経験もある。
今でも「王様のアイデア」という言葉を聞くと、当時の高揚感が思い出される。それだけ、遊び心を駆りたててくれるネーミングでもあった。なんてたって「王様の」アイデアだもんね。それに比べると今は、「頭がいい人の」アイデアという程度ばかりに感じてしまう。
昭和40年からあったというこのチェーン店。ITだ、コンピュータゲームだ、という風に消されてしまった灯火に、あらためて感謝。